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Professional Review

プロフェッショナルな視点でワールドプレミアを批評していただきました。

毛利嘉孝

社会学者、
東京藝術大学・大学院
国際芸術創造研究科教授

新しい原理からなる全く新しい音楽の体験

「演奏」が終わった後に、自分の手が汗ばんでいるのを感じていた。「よかった」とか「すばらしかった」とかという単なる聴衆としての感想を越えて、自分自身がこの場に居合わせて、演奏者たちと同じ時間と場所、そして「緊張感」を共有したことに軽い興奮を覚えていた。音楽は「聴く」ものではなく、「体験」するものだとあらためて理解した気がした。 この感覚は何だったのだろう。

一つはあらかじめ綿密に設計された会場のセッティングによるのかもしれない。演奏者たちは、指揮を取る蓮沼執太を取り囲んでいる。観客はそれを見守るかのようにさらに演奏者たちを取り囲んでいる。観客たちは、演奏者と同じ視線で蓮沼執太を見て、その指示で演奏に加わる演奏家に視線を移す。この繰り返しの中で、観客もまた演奏家と同じ緊張感を共有したのだった。

もちろん、緊張感と言っても一様ではない。公募で集まった10代から60代まで28名の演奏者たちは世代も性別も経験も多種多様だ。国際的に活躍をするプロの演奏家もいれば、楽器を始めてまもない人もいる。障がいと向き合いながら自分の表現を模索している演奏家もいれば、純粋に音楽を楽しんでいるアマチュア演奏家もいる。 リハーサルは本番の当日のみ。練習を重ねて音楽を作り上げるのではなく、そこで初めて会った人が一期一会の音楽を奏でる。家事や育児、介護や仕事などさまざまな理由で十分に時間が取れない人も参加できるように配慮がされている。事前に楽譜を渡されているとはいえ、結果的にジャズや実験音楽の即興演奏のような要素が否応なしに織り込まれている。 印象深いのは、各人がそれぞれのやり方で他の演奏家に心を配り、それが集団的な緊張感を生み、そしてその緊張感を土台としてひとつの信頼感を形成していたことだった。陸上選手がバトンを渡していくように、演奏家たちが音を丁寧に繋いでいく。多少受け渡しが乱れても、お互いの配慮(ケア)によって魔法のように音が、音楽が繋がっていく。

「ダイヴァーシティ」という言葉が流布し、多種多様な生き方を肯定することがテーマになって久しい。けれども、音楽という文化領域にはいまだに「才能」とか「上手/下手」とかいう価値基準が根強く残っている。一部の特権的な演奏家だけがプロとしての演奏を許され、他の人々はアマチュアとして演奏を続けるか、そうでなければ音楽を「聴く」だけの聴衆という枠組みに閉じこめられている。 だがそれも最後の打破すべき「神話」なのかもしれない。「Earth ∞ Pieces vol.1 ワールドプレミア」は全く異なる原理の新しい音楽の可能性を垣間見せていた。それぞれの演奏家が自分たちの能力を使って、全く異質の全員がそれぞれの異なった音を出す。もちろんそれは、一聴するとカオス的な状況にも聞こえるのだが、その混沌とした新しい音の中に「喜びの歌(第九)」が響き渡る。この時、音楽は単に「聴く」対象ではなく、全身で受け入れる「体験」となる。 短い時間だったが、この「Earth ∞ Pieces vol.1 ワールドプレミア」で、私たちがまだ知らない別の原理の音楽を「体験」したのではないか。2030年まで続くこのプロジェクトがどのような進化を遂げるのか。このスリリングな「体験」をできるだけ多くの人と共有したい。

profile

毛利嘉孝。 社会学、専門はメディア/文化研究。東京藝術大学・大学院国際芸術創造研究科教授、音楽学部音楽環境創造科教授、未来創造継承センター長。特に現代美術や音楽、メディアなど現代文化と都市空間の編成や社会運動をテーマに批評活動を行う。主著に『バンクシー:アート・テロリスト』(光文社新書)、『ストリートの思想』(日本放送出版協会)、『文化=政治』(月曜社)、『増補 ポピュラー音楽と資本主義』(せりか書房)、編著に『アフターミュージッキング』(東京藝術大学出版会)ほか。

松田朋春

プランナー、詩人

とにかくはじまるのだ
そういう集まりだった
象の鼻テラスはいつになくよそゆきで
ゲストとプレーヤーと
何よりも作品を
大切に扱おうとはりきっていた
いかにも手探りだが
その姿勢は伝わってくる
食事もすべて美味しい
ちょっと多くないか
がっかりさせたくないから
そうなる
演奏のはじまりを待つ
栗栖が歩くと
その場の躊躇が消える
音がはじまる
心細い音と
励ます音が
対話している
昼からの練習の空気が混じる
知らない同士の音ではない
空気が揺れて
ゲストも揺れて
特別の音のような
いつもの音のような
ベートーベンに聞かせたい
はじまりの夜の音
プレーヤーの動作が
一巡していくのを見ている
どれも
新鮮な音がする
このまま世界にひろがるようすを
想像してみる
どんな技術とスタッフでやるのだろう
やがてゲストのハミングが混じりはじめる
歌うより聞いていたい
練習したかったな
練習が本番なのか

フィナーレというより
はじまったという
結び方だった

何がはじまった?
その日その場限りの
人類の応援団
やがて人類そのものになるような

profile

松田朋春。1964年東京生まれ。企業とクリエイターのコラボレーション事業「ランデヴー プロジェクト」や視覚障害者が開発に携わった「ダイアログ・イン・ザ・ダークタオル」、道後温泉での芸術祭「道後オンセナート(2014および21〜23)」、日本の優れた工場との連合ブランド「典型プロジェクト」など、幅広い企画ディレクションを行う。グッドデザイン賞審査委員(2013〜15)。多摩美術大学、東京理科大学非常勤講師。スパイラル シニアプランナー。東急設計コンサルタント プランニングディレクター。著書に『ワークショップ』(宣伝会議 共著)『空気の日記』(書肆侃侃房)『わたしの犬退治』(新風舎)『エアリアル』(ポエムピース)などがある。ポエトリーコレクティブ「oblaat(オブラート)」世話人。

Impression

色々な立場でワールドプレミアに参画した人たちの声を集めました。

  • 多様性という言葉の意味を心の底から感じられたイベントでした。参加者の全てが個々の可能性を精一杯発揮して、この上ない極上の「喜びの歌」を完成させていました。通常のコンサートの後に感じる達成感とは異なった、全く感じたことのないタイプの達成感で満たされて、未だに興奮が覚めません。楽しい時間を過ごさせていただき心より感謝いたします。

    ヴィオラ担当、音楽家

  • 素敵なシチュエーションで素敵な皆さんと、プロのスタッフの指導とはいえ、ぶっつけで演奏できるなんて、自分史上最高にテンション上がりましたよ。自分は身体的な障害なく定期的に音楽ライブ活動を行っていますが、パラの方々と中々話せる機会がありませんが、もっと仲良くなって自分達のライブにも参加して欲しいと思いました。

    ヴォーカル担当、会社員

  • 色々な立場でワールドプレミアに参画した人たち
  • 1日で会った瞬間からあんなに音が上手く重なる体験をした事がなかったので、ただただびっくりとこんな事が出来る可能性があるんだと驚きました。思ったより面白かったしリハーサルより本番が更に楽しめたし、緊張は全くしてなくて、あの時間がめっちゃ楽しかった!って感じです。

    カホン担当 、高校生

  • 普段は演奏も聴きに来るのも仲間内というアマチュア音楽の世界から一歩踏み出したような感じがしました。特に一緒に参加した息子には衝撃的な体験だったようです。彼の中で音楽に対する色んなことが変わり始めるのではないかと思えています。教育的な面でもとても意義があったと思います!

    チェロ担当、社会教育系

  • 人数やパートが多ければ合わせるのは難しく、バンドの時のように自分の聞きやすいモニターを返してもらえず、近くにいる人としかアイコンタクトが取れません。そんな環境で音がハマり、キマった瞬間は鳥肌が立ちました。ボクは具体的な演奏の楽譜や音源がなかったので、どんなプレイをすればいいのか、何を求められているのか不安でいっぱいで、いろんなパターンを準備して臨みました。おかげで久しぶりに音楽を勉強しました。1日完結だからこその有意義で実りある時間を過ごせました。

    エレキギター担当、ギタリスト

  • とても楽しかったです!最終リハの終了後までこんなに不安がある本番は初めてでしたが、自分よりもっと演奏に不安を持ってる方が隣にいることがわかり、どうしたらみんなで気持ちよく演奏できるだろうと気づけば頭が切り替わっていました。音楽スタッフの方が入りをわかりやすく合図してくれたり、保護者の方と一緒に相談もできたので、同じ気持ちでサポートできました。一日完結型だから、アドレナリンに任せて気持ちが切れずに走り切れた感じがしています。事前にオンラインで自己紹介できていたので初対面の方ともスムーズにお話ができたこともよかったです。大学合唱の仲間や音大を出て今は専業主婦の友人など、普段演奏の機会を持たない音楽仲間を次回は誘いたい!

    ヴォーカル担当、SV勤務

  • 「緊張して不安だったけど、楽しかった。来年もまた参加したい。」娘がそう申しておりました。娘は自閉症のため、見通しが立たないことへの不安や、変化を嫌うという特性があります。皆さんの輪の中にいることだけで、娘にとってはるかに大きな挑戦、演奏後は頑張った自分に感動して涙が溢れてきてしまいましたが、リハーサルから見てくださっていたお客様が泣きながら感動したと声をかけてくださり、本当に嬉しかったです。私達のような親子をあたたかく見守ってくださる人が増え、娘と同じような特性のある人達が少しでも生きやすい社会になっていくことを願っています。学校の先生方や教育委員会の方々にも見ていただきたいです。

    ヴォーカル担当/母、中学生

  • 色々な立場でワールドプレミアに参画した人たち
  • 普段仕事ではイベントや展示会の企画や運営など、裏方に回る仕事が多いので、初めてプレイヤーを経験することができて嬉しかったです。演奏するプレイヤーの皆さんと交流できたことも嬉しかったですが、同じく保護者の方や介助者の方々とも交流ができて楽しかったです。一日完結型ということもあって、一曲を作り上げるペースが普通の「練習から合奏」とは全く違って新鮮でした。

    テナーサックス担当、フリーター

  • クラシックと言うジャンルにとらわれず、いろいろな楽器や歌い方で参加することができ、とても良かった。また、普段このようなイベントに参加するときは、自分から話しかけることができなかったが、今回は出演者の方に思い切って話しかけてみたり、写真撮影をお願いすることができた。音楽で社会貢献をしたいと考えている人に薦めたいです!

    ヴォーカル担当、音大生

  • ベートーヴェン、よろこびのうたのえんそう、すばらしかったです。気持ち悪くなったけど、大丈夫になりました。さいご、できてうれしかったです。リハーサルをとってもがんばりました。さいしょ泣いていたお友達がにこにこになったこともうれしかったです。

    ヴァイオリン担当、福祉事業所勤務

  • 色々な立場でワールドプレミアに参画した人たち
  • はじめて出会った方々が演奏してると思えないほど重厚な奇跡の第九!娘専用の楽譜が届いた時には、びっくり!えっ?!カタカナまで振ってある?!個人用にこんな準備までして下さって。本番では、それぞれの方に見せ場を作ってくださり、戸惑っている娘の隣で指揮をしてくださった蓮沼さん、リズムがズレる娘に合わせて演奏してくださったKさん、音出しのキューを出してくださったスタッフさん、たくさんの方々に支えられて、あの壮大で素敵な演奏の中に娘のピアニカも入っていたと思うと感無量でした!『手伝ってあげてる』ではなくて、当たり前の様になされているさりげないサポート。これこそが、多様な人達の集まる1日完結型の演奏会が大成功した要因!

    ピアニカ担当/母、作業所勤務

  • プレイヤーもスタッフもサポーターもお客さんも、とてもすてきな想いでつながり、みんなで奏でる場にプレイヤーとして関われて、とても幸せな時間を頂きました。言葉でのコミュニケーションが難しい方がいて、会話が早すぎて失敗したかな?などと内心で戸惑っていたりしたのですが、演奏では楽器をお互い鳴らしながら一緒にたのしめているような気持ちになりました。このプログラムは、演奏以外で交流する時間も演奏と同じくらい大事だという印象をもちました。

    パーカッション担当、Fringe主宰

  • 色々な立場でワールドプレミアに参画した人たち
  • 障害の有無に関係なく皆の心の中にある「音楽」はそれぞれ多様だった。それを持ち寄り理解しきれない時間制限の中で、1日で編集してアウトプットすると言う活動は、とても刺激的でした。視覚に障害のある人にもわかる合図の仕方や、特性のあるメンバーが所定の時間に持ち場に集まるために助け合うノウハウなどが、互いのコミュニケーションの中で構築されました。そのアクセシビリティに関する学びは、この日が終わった後でも生かせるのではないかと思う。1日完結型のステージを求めるすべての人にお知らせしたいです。

    司会担当、フリーアナウンサー

  • 不可能を可能にする場に遭遇できたと感じ、強く心打たれました。「ここでしか聞けない音楽」というのはまさにその通りで、1日完結型で、1回しか聞けないところが貴重な体験でとても良かったです。また、スキルや経験値がバラバラでも、一人一人の個性を活かす構成にしてくださった蓮沼さんには脱帽です。1日を通して、もっと参加者一人一人のストーリーや背景を知りたいと思いました。ぜひ第二弾も見たいです!!

    通訳担当、俳優

  • 音楽の力、第九という楽曲の力、まさに生命の喜びを覚えました。パラでなくても、想像力と思いやりに溢れた自由で幸せな世界が作れることがまざまざと伝わりました。終演後に、親しげに一礼くださったマダムがいらして、「そのネクタイ作ったの私なんです」と満面の笑み。これも小さいけどとっても幸せな出会いでした。このプログラムを都市開発事業者にお薦めしたい。商業施設など、人も集まりやすく、発信力もあり、体験を共有する人を増やして寛容な文化を醸成していく場であると同時に、このプログラムを体験した社員によって企業そのものの中に多様性が浸透していくことも期待できます。

    サポーター

  • それぞれに大変さを抱えている人もいたと思うが、プレイヤーたちが本当に心を合わせて良いものを作ろうとしていた事がとても良かった。第九のメインテーマの変奏曲をいろいろな楽器、音、さまざまな歩みをしてきた人々と奏でる演奏は、とても彩り豊かなメッセージ性をもった第九だったと思う。このような場はなかなか存在しません。オンライン勉強会で舞台美術や共通の蝶ネクタイ、食事などに関わる方々の思いも知ることができた。観客がうたに参加できたのも良かった。他者と共に生きる気持ちがあることで、作品を作り上げるプロセスで誰も置き去りにしないことが実現されると思うし、そのプロセスが見ている人の心を動かす。

    サポーター

  • 楽器もバラバラで一日完結、どんな風になるのかと思いましたが、とてもまとまっていてびっくりしました。それぞれの楽器をいかし、色々な雰囲気の第九がきけたのも楽しかったです。タップダンスも音のひとつになるというのも視覚的にも楽しめました!音楽会はきちんと習い事に通い、家でも何度も練習してからでないと出られないイメージがあります。一方で、今の子どもは宿題やほかの習い事で忙しい。習いたくてもキャパオーバー。そんな中、気軽に本格的な音楽に触れられる機会はとても良いと思うので、次は子どもたちをプレイヤーとして参加させたいです。

    サポーター

  • 色々な立場でワールドプレミアに参画した人たち
  • 色々な立場でワールドプレミアに参画した人たち
  • 純粋にこんな第九、こんなクラシック音楽を確かに聞いたことがなく、多彩なパーカッションやリズムの変化が面白く、音楽として大変楽しく鑑賞させていただきました。途中曲が盛り上がった時にバイオリンを演奏していた男性が感極まって拳を高く上げている姿が見え、心が突き動かされました。そんな素直なボディランゲージをしたのは私達はいつが最後でしょうか?私達はいつからか、自分の感情にも蓋をしたり、挑戦したい心の声に耳を傾けなくなったり、何かに対して真正面から向き合うという事をやめてしまっているような気がしてなりません。偶然の出来事でしたが私には力強く美しく見えて印象に残っています。本当の意味でのSDGsってなんだろう、難しい…それでも音楽が会場を完全に1つにしていた事は確か。子どもがまだ小さいのですが、多様な人がいる世界に触れ、自分はどうあるべきなんだろう、という答えのでない問いを考えるきっかけになると思うので、次回は家族や子どもと一緒に観たいです。

    サポーター

  • 演奏会では、関わったすべての皆さんの熱量が感じられる「場」を体感することができました。あの場に身を置くことで、プレイヤーの皆さんの、それぞれひとつひとつの演奏がだんだんと調和していくさまをじりじりと身をもって体感し、最後はコーラスにもご一緒でき、その熱量を存分に共有することができました。普段の生活の中ではなかなか得がたい「満たされた感覚」をおみやげにもらった感じです。音楽だけでなく、会場装飾や蝶ネクタイ等、そこにまつわるストーリーも含めて、アートとしても新しい取り組みだと思います。そんな熱量のあるイベントを、どんなハンデのある人とも共に体感してみんなで楽しく盛り上がれたら、最高に楽しい!と思います。

    サポーター

  • ディレクターの栗栖さんとは、アクセシビリティの向上と環境のサスティナビリティは根底で深く繋がっていて、どちらかだけではよい社会の実現にはならないということをよくお話ししていました。今回のワールドプレミアのためにサスティナブルな手法で製作した空間装飾をデザイン、製作しました。この経験で、その二つのつながりの実践に一歩踏み出せたかなという実感があります。本番当日は観客の一人として参加させていただきました。実際に演奏に参加した人だけでなく、音楽会を見守った私も、この奏でられた音楽の一員のように感じられる素晴らしい時間でした。第九のメロディと演奏者の音楽に対する情熱によって会場全体が高揚感で満ち満ちて、圧倒的な観客体験をさせていただきました。

    空間演出担当 / 大島広子(Image Nation Green)

  • 色々な立場でワールドプレミアに参画した人たち
  • この規模の演奏会を、その場限りのメンバーでその日限りでリハーサル・本番という経験にはじめて立ち会いました。集合時には不安そうな顔をしている参加者のみなさんも(おそらくスタッフも)いましたが、いざリハーサルが始まってみると点と点が一気に結びつき、力強いパワーを持った素敵なハーモニーが生まれました。本番中も皆さんの集中力と笑顔のコミュニケーション、そして個々の音の重なりを間近で体感することができ大変貴重な時間となりました。

    制作担当/一般人

  • Earth ∞ Pieces vol.1は、参加者や使用楽器にとらわれず、極力ぶっつけで演奏するという前代未聞の試みでした。これは、世の中の常識的なものさしを可能な限り取り払うことで、全体としてダイバーシティを表現する挑戦だったと言えます。機械や熟練した演奏家による演奏はそれ自体で感動を与えますが、その感動は主に曲の良さや演奏の正確さに由来するものです。一方で、「さまざまなものがコラボレーションすることで生まれるもの」の良さは生(き)のものを活かすことで伝えられ、予備知識のない人にも言葉にできない何かを伝えられるのです。Earth ∞ Pieces vol.1は、まさに「コラボレーションの魔法」を体現した試みでありこのプロジェクトを通じて、ダイバーシティと協調の力で新しい可能性を示すことができたと考えています。

    メセナパートナー / 岩崎晃(株式会社DataMarket)